試算表はそのままでは役に立たない。管理会計って何を管理するの?

ずっと帳簿はつけて、試算表も出してきたけど、今いち活用できていない気がする。
管理会計を導入したい。

何となく値付けして受注してきたけれど、本当にこれでよいのだろうか?
見える化したいので、管理会計のしくみが必要だと感じている。

そんなご相談が、ここ最近特に寄せられるようになりました。

それなら、早期の月次決算がまず必要、とお聞きしてみると、

ご相談を寄せてくださる方に限って、毎月試算表は作られています。

試算表は作れているけれど、今いち活用できていない。

つまり、どういうことなのでしょう?

試算表は作れているけれど、経営者の大切な仕事「意思決定」には役に立っていない。

試算表は作れているけれど、今の会社の状況が「手に取るように」はわからない。

でも、実は、これって「あるある」なんです。

会計は、会社の状況を利害関係者へ報告するためにありますが、最も大切な報告先は、経営者です。

ただ、いわゆる「試算表」は「経営者への報告用に向いていない形式」です。

毎年、決算申告のために作る決算書と同じような形式で「試算表」が作られていると思います。

たとえば、製造業なら、貸借対照表・損益計算書・製造原価報告書の試算表。

この3表(あるいは、貸借対照表と損益計算書の2表)を見ていても、わかりにくい。

「利益をあと100万円増やすには、いくら売上増やしたらいいんやろ?」

「来年社員1人増やしたいんだけど、いけるかな?」

「コロナの影響で売上が〇〇%減りそう。利益はいくらになるんかな。お金はいけるんかな」

こういう経営者の関心ごとには応えてくれません。

少し専門的な言葉を使わせてくださいね。

決算書や試算表は「財務会計」という考え方で作られています。

財務会計は、外部報告用です。

上場企業でいうと「IR情報」がこれにあたります。

中小企業でいうと、外部は金融機関や税務署です。

対して、

経営者が業績評価をしたり、意思決定したりするために必要な会計の考え方は「管理会計」です。

でも、普段目にする決算書や試算表は、管理会計用ではなく、財務会計用に作られています。

財務会計では、科目を細かに正確に分けて、正しく報告することが目的です。

だから、経営者にとっては、わかりにくい のです。

じゃあ、どうしたら管理会計にできるの?

それ用にシステム入れなあかんの?

上場企業では、日ごろの業績管理や意思決定のための数字と、外部報告用の数字は、

営業企画(管理)部門、経理部門、とそれぞれ違う部署が担当していますが、

中小企業ではそのように部署をわけることはできませんし、そこまでの人員をかけてられません。

日ごろの試算表を「組み替えて」応用すれば、

中小企業でも、経営者が意思決定ができる管理会計は十分可能です。

ステップとしては次の通り。

1)毎月の試算表の不要な「でこぼこ」を直す(月によって数字が暴れてないか)

2)変動損益計算書に組み替える

3)管理すべき指標を決める (ここ大事)

4)そしてPDCAをまわす (やりっぱなしにしない)

1)毎月の試算表の不要な「でこぼこ」を直す(月によって数字が暴れてないか)

ご相談いただく方の試算表を見ていると、ある費用科目の数字が「でこぼこ」していることがあります。

たとえば法定福利費。

社会保険料支払額 から 従業員負担分を差し引いた金額が表示される科目です。

月によって、数字がマイナスだったり、大きくプラスだったり、でこぼこ。

社会保険料の支払いは月末ですが、月末が土日で翌月にずれ込んだときがマイナスに。

5月の法定福利費は△50万円 6月の法定福利費が150万円

本来は 5月50万円 6月50万円が各月の負担の金額のはず。

このようにでこぼこしていると正確な判断が難しくなります。

ちょっとした経理の工夫で直せますから、まずはこの「でこぼこ」がないようにします。

2)変動損益計算書に組み替える

1)のでこぼこを直したうえで、試算表を「変動損益計算書」に組み替えます。

(すでにおなじみのお客様もいらっしゃるかと思いますが)

これをご活用いただくと、会社の業績評価がしやすくなり、経営者は意思決定に必要な関心ごとに応えやすくなります。

変動損益計算書のつくりかたについては、産創館さんのコラムに書かせていただきました。

図を交えてわかりやすくしているので、お読みいただけたら嬉しいです。

長くなるので、3)4)については次回のメルマガで書きますが・・・

3)管理すべき指標を決める (ここ大事)

変動損益計算書に組みなおし、会社の状況の全体像がわかったら、次はここです。

管理すべき指標を決めること。

KPI(Key Performance Indicator)とも言います。

客数や単価、稼働率、案件数、ネゴ数・・・いろんな数字が会社にはありますが、

あれもこれも追うことは難しく、現場は混乱。どれをどのように追っていくのか?

4)そしてPDCAをまわす

やりっぱなしにせず、振り返り・改善につなげるしくみが必要です。

3)4)は来週に、できるだけわかりやすく書きますので、どうぞお楽しみに。

どの会社も経理はしているのに、会計を活かしきれていないとすれば、

本当にもったいないなぁと思うと同時に、会計人として責任を感じています。

黒字で、かつ、経営者が本当にやりたいこと・会社が目指すことが実現できることを支援するのが私の役割です。

この記事を書いた人
神佐真由美

関西を中心に活動する税理士。自ら道を切り拓く経営者に尊敬の念を頂き、経営者にとって「一番身近なパートナー」になるべく、起業支援や資金調達支援、経営改善や組織再編、事業承継支援など多くの経験を積む。
「会計は現場の行動と成果に結びついてこそ意味がある」をモットーに、ビジネス全体を俯瞰して伴走し、問題解決ができるビジネスドクター税理士として活動中。

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