【M&A】売り手の成功率と買い手の成功率はこんなに違う

ーM&A

中小企業にもM&Aが身近な存在になって数年経ちますが、売り手と買い手の支援両方経験してみての気づきをまとめました。
売り手と買い手では成功率が全然違います。成功率を上げるM&A先の見極め方もまとめました。

「会社を売りたい」「会社を買いたい」M&A市場が活況!?

「事業を買いたい」「どこかいい会社があれば買いたい」
「ゆくゆくは売却したい」
このようなご相談をお受けすることが多くなったように思います。

中小企業でもM&Aが活況のようで、今までにないくらいだと感じています。
お読みいただいている皆さんのまわりではいかがでしょうか。

私は、ありがたいことに、10年以上前からお客様のM&Aに関わらせて頂いています。

初めに勤めた税理士事務所では、となり同士だった会計士事務所に出向して、
いくらで売るか?いくらで買うか?の算定のお手伝いをしていましたし、
会社や事業の売却、そして買収、合併なども一通り経験しています。

1つとして似たケースはなく、ケースバイケースだなと感じます。

M&Aの成功率はどのくらいか(筆者の経験から)


M&Aの成功率ってどのくらいなんでしょう?

「売ってよかった」「買ってよかった」と経営者が思うことを

成功率と呼ぶとすれば(M&A後 半年〜1年に、としましょう)、

会社が売れた側の成功率は、ほぼ100%

一方で、会社を買った側の成功率は、

50%もないのではないかということです。

売る側の成功率はほぼ100%

会社を売るのは、売りたい事情があるから。

・後継者がいない

・経営が続けられない(資金面や運営上の事情)

・選択と集中のために部門を切り分けたい

いろんな事情があります。

売れたということは、この課題が解決できたことになるので、
成功なんですよね。(売れなくて困っている、というケースもありますが)

ある会社では、社長が還暦前に一念発起して興した会社が、
10年かけて、地道に成長を遂げました。

息子さんは会社に入らず、社内にも後継者はおらず。

社長は69歳。今から後継者を育てるのは難しいとして、

売却先を探したところ、1年ほどで相手が見つかり、ある会社の子会社になりました。

従業員は全員引き継いでほしいという希望も受け入れてもらい、

数億円の株式譲渡代金と退職金を受け取り、まさにハッピーリタイア。

専業主婦からパートとして就職し、正社員、幹部として社長を支えた右腕の方も、
数千万の株式譲渡代金と退職金を受け取り、なんとも夢のような話です。

社長は、「誰が経営しても儲かる会社をつくる」とおっしゃって、
経営理念の浸透や、暗黙知を見える化することに、力をいれておられました。

これが、高値で買ってもらうことに繋がったのかもしれません。

別の会社のケースですが、資金面でムリがかかり、この先継続が難しいと判断し、

事業引継ぎセンターに相談に行ったり
(すぐに動いてくれ、候補先の提示を受けました)

買いたい事業者をよく知っている方にお願いしたり、

金融機関にも依頼したりと、手を尽くしたケースもあります。

さまざまな企業が視察に来られましたが(なかには中国の企業も!)、

奇跡的なこともあるもので、動いていれば、見つかるものです。

ちょうど足掛かりを探していた会社に、買ってもらうことができました。

というように、買ってもらえたケースは、ほぼ成功です。

買う側の成功率はどのくらいか?

一方で、買う側は、引き継いだあと、経営をしていかなければなりません。

買う段階で、見えていないこともたくさんあります。

「え~っ そうだったの?」「聞いた話とちょっと違う・・・」

そんなことがないように、注意深く見極めなければならないのです。

売り手を見極めるポイント簡易版

ごく簡単に見極めるポイントを挙げてみました。

・財務面

 隠れた債務はないか?(リースや未払残業代など)

 試算表は会社の姿を現せているか?(よく見せていないか?)

 投資に見合う成果があるか?

・顧客との関係性

 顧客や協力先、供給元は、社長の影響力でついてきているのか、会社についてきているのか

 (退くと去られる関係性は危険)

・人事面

 派閥はないか

 影響力や技術力が高い方が退職しようとしていないか

 給与や賞与はちゃんと体系化されているか 

 (念入りなコミュニケーションは必須ですね)

・目に見えない資産や文化

 何が顧客に評価されているのか?

 どんな社風か?

 現経営者が大事にしてきたことは何か?

 (相手先にも共感してもらえるような、こちらの理念が明確にあるといいですね!)

しかし・・・

どれだけ慎重に見たとしても、半年くらいで全てがわかることはありません。

「えーっ?そうだったの?」はあるんですね。

(結婚でもそうかもしれません。10年経っても、えっそんな面あったの?てことありますし、お互いに(-。-; あっ我が家の場合です)

これらの視点もとても大事なのですが、

それ以上に、

シナジー効果があるか、

成長の可能性はどうか、

海外展開の足掛かりになりうるか、

一緒にやりたいかどうか、

など、多少の「えーっ?そうだったの?」が見つかったとしても、1+1が2以上になるような

お互いによい成長が見いだせるかどうか。

これが一番大事かと思います。

買う側は売る側の100倍以上のエネルギーと神経をつかう

こちらが引き継ぐ場合は、

売る方よりも、100倍以上のエネルギーを使うイメージです(;^_^A

後継者のいない会社が増えてくるなか、会社を買うということは、とても尊いことだと思います。

廃業せずに会社を存続できたのですから、買った会社は、とても感謝されています。

これからますますM&Aは注目されてくると思います。

買収意欲のある会社は、出会いの場が増えてくるでしょう。

仲介会社も玉石混交です。

経営者自身の目利き力が必要ですね。

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この記事を書いた人

関西を中心に活動する税理士。自ら道を切り拓く経営者に尊敬の念を頂き、経営者にとって「一番身近なパートナー」になるべく、起業支援や資金調達支援、経営改善や組織再編、事業承継支援など多くの経験を積む。
「会計は現場の行動と成果に結びついてこそ意味がある」をモットーに、ビジネス全体を俯瞰して伴走し、問題解決ができるビジネスドクター税理士として活動中。

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